借金2500万円の僕へ贈る言葉

長年培った荒んだ心に愛の言葉を

野良猫からのメッセージ

午前11時頃、お客様のアパートへ到着しました。

そのアパートの入口に小さな野良猫がいました。

顔は傷だらけで目はうつろ、肋骨が浮き出るほど体は痩せ細り、一生懸命鳴こうとしますが声が出ません。

ヨロヨロと私の足元に近づき、助けてと訴えているようでした。

壁には猫に餌を与えないで下さいの張り紙が貼ってありました。

 

「可哀想だな…助けてあげたいな。」

そう思いましたが、私は何も出来ませんでした。

後ろ髪引かれる思いで階段を駆け上がりました。

 

用事を済ませ、階段を下りて入口に戻ると、

その猫は私の顔を見るや足元に寄って来て、

口を開いて一生懸命に助けてって鳴こうとするのです。

だけど声は出ません…

 

「可哀想だな…何か出来ないかな。」

そう思いましたが、私は何も出来ませんでした。

後ろ髪引かれる思いでその場を立ち去りました。

 

その後、しばらく移動する間、猫の事は気になっていましたが、時間の経過と共にいつしか忘れてしまっていました。

 

夕方になり、もう一度そのお客様の元へ行く用事があり、またそのアパートを訪れました。

同じ場所にその小さな野良猫は居ました。

おそらく動く事も辛いのでしょう。

私の顔を見るや、また足元に寄って来て、

口を開いて一生懸命に助けてって鳴こうとするのです。

だけど声は出ません…

 

「まだ居たのかぁ…何か食べさせてあげたいな。」

そう思いましたが、私は何も出来ませんでした。

後ろ髪引かれる思いで階段を駆け上がりました。

 

用事を済ませ、階段を降りる時、もう猫の事が気になって気になって仕方がありません。

保健所に連絡すると殺処分と聞いたし、壁には猫に餌を与えないで下さいの張り紙が…。

このまま見捨てると、あの猫は死んでしまう…

 

私は決めました。

引き取って面倒みることを。

これだけ私に出せない声で助けてと訴えてくる。

動くのも辛いはずなのに足元に寄り添ってくる。

見捨てるわけにはいかない!

「安心しろよ。大丈夫だ。助けてやるからな!」

急いで階段を駆け下りました。

 

だが、そこに猫は居ませんでした…

辺りを見渡しましたが居ないのです。

 

「あれだけ助けを求めてきて、いざ助けようと思ったら居ないって運が悪い猫だなぁ…。

あと一回頑張れば、もしかしたら救われた命だったのに…」

 

そう思いましたが、結局私は何も出来ませんでした。

後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去りました。

 

その後、しばらく移動する間、猫の事は気になっていましたが、時間の経過と共にいつしか忘れてしまっていました。

 

家に帰ってくつろいでいる時、ふと今日の猫の事を思い出しました。

「あの猫、今頃何してるかなぁ…」

「ちゃんと生きてるかなぁ…」

「もう少しで助けられたのになぁ…」

 

夜も更けて、眠気が襲ってきたので布団に入りました。

ウトウトしながら、ふとこんな事を思いました。

 

「あの猫、本当は私に何かを伝えたかったんじゃないだろうか?」

 

普段何度も訪れるあの場所で、今まで猫に遭遇した事も無い。

まして人生において猫に懐かれた記憶も無い私に何故ここまで寄り添ってきたのだろう?

 

「これは何かのメッセージなのか?」

 

ゆっくりゆっくり振り返りました。

睡魔で目が潰れそうです。

頭の中がホワンホワンしています。

 

「あっ‼︎ひょっとして‼︎」

 

あの猫はもしかしたら今の私の姿…

だとすれば、あと一回…あと一回だけ力を振り絞って頑張っていれば…

人生は大きく変わっていたのかもしれない…

だけど諦めてしまった…

目の前で手放してしまった…

自ら手放してしまったんだ…

 

これは命と引き換えに私へのメッセージ…

諦めたらダメだ‼︎という私へのメッセージ…

 

「安心しろよ。大丈夫だ。助けてやるからな!」